新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたのは、BUSの「Because of You, I Shine」です。
タイのサバイバル・オーディション番組「789 SURVIVAL」で選ばれ結成された12人の大注目アイドルグループのデビュー曲です。
Youtubeの公式MVは1年半前に公開、2000万再生を超えています。
最後に書きたかったことを最初に書いちゃいますが、この曲がデビュー曲って最高!!
メンバーにとっても、リスナーにとっても最高!
嵐のデビュー曲が「A・RA・SHI」だったことくらい最高!(私見)
この曲の魅力を一言で言うと、キラキラ明るい世界を描き切っているということ。
明るい曲っていっぱいあるじゃん、て思いがちですが、国を問わず、ヒット曲ってマイナー超でいい曲っぽいものがすごく多いと思います。
「泣きのメロディー」という言葉があるように、マイナー調でちょっと暗い雰囲気を出して共感させる方がウケやすいような印象があります。
ただ明るい曲って、浅いとか、薄っぺらいって片づけられやすいのかもしれません。
そんな中、底抜けに明るいこの曲はある意味挑戦とも言えるんじゃないでしょうか。
コード的には要所にマイナーコードを使っているものの、それはその明るさを補強するためのアクセント程度です。
まずイントロ!
イントロはギターが引っ張るフレーズから始まりますが、これがすばらしい!
このイントロがすでに曲全体を通底する明るくてポジティブな空気を決めています。
コードとしては「D♭」なんですが、ギターでこの曲のD♭を弾こうとするとひと苦労です。
一番下の一番高い音をどうにか出さないとこのキラッとした雰囲気が出ないのです。
神はディティールに宿る…
この曲をはじめて聴いた時、何かに印象が似ているなって思ったんです。
いい曲で王道感があって、ギターの存在感が光っていて、明るいポジティブな曲でメジャーコードが引き立つ曲…
私が思いついたのはキングオブポップ、マイケル・ジャクソンの「Black or White」です。
マイケル・ジャクソンも、「ビリー・ジーン/Billie Jean」や「スリラー/Thriller」含め、暗めの曲調のマイナー調の楽曲が大々ヒットを飛ばす中、「Black or White」はちょっと異色とも言える明るい曲です。
余談ですが、こちらのPVはCG技術がまだ浸透していなかった中、いろんな人がめまぐるしくシームレスに別人に変わる「モーフィング」でも注目されました。
その中に日本人(ユーコ・スミダ・ジャクソンさん)が入ってたぞー!というのも話題になりました。
この方、のちに、マドンナからもオファーされ、事情あって断ったそうですが、その後何かのパーティーでマドンナと会った時、マドンナ本人に「あ!あなたが私のオファーを断ったユーコね!」的なことを言われたそうです。
マドンナのアンテナ、すさまじし…。
話がそれましたが、それる話が本記事の順路でもあるので申し訳ありませんがお付き合いもしくはスクロールを…。
熾烈なオーディションを勝ち抜いたメンバーですし、12人と大人数ですが歌唱力もダンスも、何気ないしぐさの表現力もめちゃくちゃ高いです。
そして全員、声の伸びがすごい!
PVの編集も、これだけ大勢のメンバーがいるのに個々の魅力を引き出しています。
これはクリエイティブというより数学的な計算&処理能力が問われるレベルなのでは、と思ってしまいます。
歌唱について魅力的だったのは、歌とラップの自然な接続です。
溜めをつくって、「さあ、ラップ来ますよー」という感じではなく、
歌いあげるパートとラップをグラデーションぽく繋いでいるから気づかないうちにラップになっているんですね。
そうこうしているうちにサビやブリッジなど、聴きどころがやってくる。聴きはじめたら最後まで聴いちゃう理由のひとつでしょう。
すごくかっこいいです。
そして音づくり!
また話がそれますが、それる話が本記事の順路でもあるので(2回目)、スクロールのご準備を。
音に関してサワディー的に反応したのは1:40あたり~間奏の部分です。
ここ、めっちゃかっこいいです!
うみょうみょしてる音が入っているじゃないですか。
これ、本家そのままではないですが、かつて日本のローランドというメーカーが1982年に発表した伝説的なベースシンセサイザーの音の亜種/発展形です。
この音が出てきたら、音源好きとして期待してしまうのは同じくローランドのドラム系の音の登場です。
…来ました!!
1:57あたりのラップスタート直後から定期的に、「カン♪」という澄んだ打楽器っぽい音、聴こえませんか?
これも本家そのままではないと思いますが、同じくローランドの昔のリズムマシン、TR-808(通称ヤオヤ)の「カウベル」の音です。
ローランドのこの辺の音源機材は当初はベースやドラムの代替品という位置づけのもので、超画期的、超高価格、圧倒的不人気で生産終了したものの、のちに「この音おもしろいじゃん!」とテクノ業界から注目され、今では超プレミアがついている機材です。
こまい所を力説していてなんなんですが、この辺の音を使うのって、サウンドプロデューサー的にはメッセージでもあるのです。
皆さんご存知のピコ太郎の「PPAP」は世界的にヒットしましたが、あの曲の中にはまさにローランドTR-808のカウベルが歌の次の準主役のようにフィーチャーされていていました。
のちに、海外でも活躍する日本のミュージシャン/トラックメーカー、トーフビーツは、「ピコ太郎が世界でウケたのはあの音を使ったことも本物感を後押ししたのでは?」というようなコメントをしています。
https://www.j-cast.com/2017/01/16288187.html?p=all
-DJや音楽マニアはPPAPを聴いただけで、「ピコ太郎さんが本当のテクノファンだとすぐ分かる」という。-
音は世界共通ですから、音づくりをする人たちにとっては、ニヤリとするところだったんでしょう。
話長くなりましたが、そんな要素がこの曲に入っているのが、個人的にもうれしい!
最後に書きたかったことを最初に書きつつ最後にも書いちゃいますが、この曲がデビュー曲って最高!!!
だって、いい曲で、明るくてポジティブで、ライブで絶対盛り上がる曲がグループの原点って、こんな宝物ないですよ。
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]