新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたのは、タイの人気俳優/シンガーJeff Saturの「Loop」です。
Jeff Saturは以前タイナウのサワディーワタナベ記事でも「GHOST」の記事を書かせていただきましたが、この曲もジェフの魅力が発揮されていてうっとりしてしまいます。
まず楽曲タイトル「Loop」ですが、ジェフの人気曲って「FADE」「GHOST」「Hide」など、シャープなワンワードの曲名が多いんですよね。
そして、ワンワードだからこそ最初の印象も解釈の幅も無限という、コンセプチュアルであり、大物の余裕を感じさせるブランディングがなされています。スタイリッシュですね。
サムネに入っているタイトルのロゴもとても凝っていて美しく、「サムネの段階からジェフと曲の個性を表現するぞ!」っていう、クリエイターの強いこだわり、アーティスト気質が感じられます。
曲の話に入りましょう。
個人的な解釈も入りますが、「恋心をなかなか伝えられない毎日がループしていく」という恋愛のテーマでありつつ、もっと広い意味では「本当に求めている明日はなかなか来ない」という、内省的で哲学的にも感じられる世界観ではないでしょうか。
そんな切ないストーリーの中にも、「今日できないということは、明日もできない。明日になれば明日は今日になっちゃうから」的な、一休さんのとんちのような、おととい来やがれ的なユーモアも織り交ぜている所がおもしろいです。
この曲も、ジェフの歌唱がすばらしいですね。
「GHOST」でも感じた声の消え方の美しさはもちろんですが、この曲は音数が少なくシンプルなので、相対的に歌の魅力の存在感が大きくなっていて、じっくり、しっとり堪能できます。
どんな曲にも対応して歌の具合のバランスを調整できちゃうんですね。すげえ…
ジェフの歌がうまくてそっちだけに気を取られがちですが、音も凝っています!
アコースティックギターの太くて艶のある澄んだ音と存在感。
非常にそぎ落とされていながら工夫されたリズムトラックが印象的です。
ドラムの、「ドン」→「タン」の「タン」にあたる音を曲が進むにつれて変えています。
そしてキーボード。
このキーボードの音と演奏がめちゃめちゃいい!
概要欄のミュージシャンにクレジットされていますが、「Rhodes Piano」とあります。
これは、数多くの名曲で使われている「フェンダーローズ」ではないですか!
(フェンダーローズは、ローズピアノ/ローデスピアノの中でも特に有名な機種名)
特に有名なのはスティーヴィー・ワンダー/Stevie Wonderの「Isn’t She Lovely」(邦題:可愛いアイシャ)でしょうか。
ジェフの曲って、音選びの感覚も渋くて抜群ですね。
さて、ギターに戻りますとジェフの楽曲の多くはThe Suuという方が担当されているようですが、ジェフ本人のギターも味わい深いんです。
音楽的才能はこんな弾き語りでも存分に発揮されていまして、5年前ですがこの動画なんて最高です。Mac AyresというNY出身のミュージシャンの曲のカバーです。
パフォーマンスも最高ですが、この選曲センス!!
正直、私もMac Ayresのことはあまり知らなかったのですが、スティーヴィー・ワンダー、ディアンジェロ、モータウン勢などに影響を受け、その辺のソウル感覚をちゃんと表現しながら、かつ自身の感覚でモダンに仕立ててしまう音楽サラブレッドです(名門バークリー音楽大学出身)。
この曲、歌のうまさから音のおしゃれさ、意図的にちょっと浮くように軽く仕立てられたリズムトラックまで、まあ非の打ちどころがない楽曲なんですが、これを聴いた後にジェフの弾き語りを聴いても、素直に「こっちもいいねえ」と思えるすごさ!
後半なんて、外の小鳥まで感動したのか、反応してさえずっちゃってます(歌に参加してるのかな)
彼の深い音楽へのリスペクトを感じられる、とても素敵なパフォーマンスだと思いました。
ジェフの曲は掘れば掘るほどどんどん魅力が湧き出します。
引き続き注目していきます!
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]