DAY 1
メインフロアとなるMAHANAKHON STAGEにトップバッターの HITGS が登場すると、フロアに新鮮な熱気が一気に満ちていった。フレッシュでダイナミックなサウンドにのせた疾走感あるパフォーマンスは、観客を一瞬でフェスモードへと引き込む。彼女たちの若さとエネルギーに満ちたパーフォマンスは、これから始まる長いサマソニ・バンコクの一日の幕開けにふさわしい熱量を放った。
続いて登場したのは幻想的なアーティストの KIKUO。浮遊感あふれるトラックに乗せた独自の音世界は、会場を異世界へと導く。ビジュアルと同期した幻想的な演出は観客を夢と現実の境界に立たせ、フロアに熱気を一気に放出させた。観客はLEDを眺めサウンドに耳を傾けながらも、その神秘的な世界に陶酔し、時間が止まったかのような没入感に浸っていた。
そこから空気を一変させたのが BUS because of you i shine。
12人組の大編成ならではの圧倒的な存在感で、ステージに登場した瞬間から会場の視線を独占した。多彩なヴォーカルが重なり合い、群舞のようなダンスが繰り広げられると、ステージはまるで色とりどりの万華鏡のように輝きを放つ。序盤ながらも観客は総立ちで声援を送り、祝祭感は一気に加速していった。
そしてメイド服姿で登場したBAND-MAIDから放たれるのは、鋭く突き刺さるようなギターとドラムが織りなす本格的なハードロック。キュートな外見とハードなサウンドのギャップが観客を驚かせ、やがてその圧倒的な声と演奏力で完全に現地のファンをも魅了していった。花道も駆使したギターやベースソロのたびに歓声が湧き上がり、ドラミングと鼓動を合わすかのように観客の熱狂をさらに盛り上げていったのが印象的だった。
続く日本代表の Creepy Nuts は、この日記念すべき誕生日を迎えたDJ松永による世界一のターンテーブルさばきと、R-指定の鋭い言葉が火花のように飛び散り、会場を一瞬にして掌握。緻密に組み上げられたビートと即興的なフロウが絡み合い、言語の壁を飛び越えてフロア全体を熱狂の渦へと巻き込んだ。観客は笑い、叫び、踊り、まるで一つの巨大なクラブに変貌したような一体感に包まれた。
そして一方の注目ステージであったTHONBURI STAGEに登場したのは、日本が誇るビートボクサー兼プロデューサーのSO-SO。マイク一本から生み出される驚異的なビートボックスのサウンドに、観客は目を見張る。ドラム、ベースライン、メロディが瞬時に重なり合い、現地のフロアを完全に掌握した。観客が「信じられない」という表情で耳を傾け、気づけば全員がリズムに身を委ねていた姿は、この夜の鮮烈なハイライトのひとつとなった。
その後、韓国インディーズの重鎮 NELL が登場。叙情的な旋律と伸びやかな歌声がホールに響き渡り、観客を静かな感動へと引き込んでいく。派手さを排したシンプルな演奏だからこそ、楽曲の美しさが際立ち、観客は目を閉じてその音世界に浸った。そして同ステージのラストを飾ったNOAが、洗練されたR&Bとポップの融合、そして日本語に加えて流暢な英語と韓国語を織り交ぜた歌唱で、国際的な舞台での存在感を強烈に示した。特にアップテンポな楽曲で見せたしなやかなダンスと表情豊かな歌声は、アジアの次世代ポップスターとしてのポテンシャルを証明。音楽が国境を越えて心を結びつけることを強く実感させた。
そしてMAHANAKHON STAGEでは、JVKE が自分色にサマソニ・バンコクの場内を染め上げ、観客の心に優しい余韻を刻んだ。温かなピアノの旋律と伸びやかな歌声は、これまでの熱狂を一度やさしく包み込み、会場を穏やかな光で満たしていく。曲が進むにつれ、観客は思わずスマートフォンのライトを掲げ、ホールは金色の海のように輝いた。その美しい一体感は、激しい熱狂の連続の中に静かな感動をもたらし、フェスの物語に大きなコントラストを添える瞬間となった。
その静けさを破るように登場したのが、日本を代表するアーティストであり人気絶頂のSnow Manだった。
午後7時40分定刻、ついに彼らがバンコクの舞台に立つと、会場の空気が一変する。完璧に揃ったダンスと力強い歌声とステージングに凝縮され、観客を圧倒した。タイ語も巧みに織り交ぜながら初めて海外の大型フェスに挑むその姿は、彼らの一挙手一投足に熱狂が重なり、涙を流すファンの姿も多く見られた。Snow Man にとっても、この瞬間は“世界のフェスに降臨”を意味する歴史的な一歩だった。
そしてアトランタ出身のスーパースター 21 Savage がステージに姿を現すと、会場はざわめきと熱狂に包まれた。鋭いラップが鳴り響き、代表曲が繰り出されるたびに観客は拳を突き上げる。無駄を削ぎ落としたミニマルな演出が逆に彼の存在感を際立たせ、ヒップホップの持つ生々しいエネルギーを観客に突きつけた。短い時間ながらも、そのインパクトは絶大だった。
そして満を持してメインステージのヘッドライナーとなるBLACK EYED PEASが登場。
「I Gotta Feeling」のイントロが響いた瞬間、観客の熱は頂点に達し、ホール全体が巨大なクラブと化した。メンバーはステージを縦横無尽に駆け回り、観客とコール&レスポンスを繰り返し、熱狂をさらに引き上げていく。
重低音が床を震わせ、オーディエンスが一斉にジャンプする光景は圧巻だった。さらに「Pump It」では観客のシンガロングが巻き起こり、会場の空気はさらに高まる。愛を願う名曲の際には常に合唱が起こり、国籍も世代も超えた観客の声が、まるで祈りのように響き渡った。音楽が社会や世界を繋ぐ原点に立ち返る瞬間であり、バンコクの夜は愛と平和を求めるメッセージで包み込まれた。こうしてDAY 1は、爆発的なエネルギーと祝祭の歓喜に彩られながら幕を閉じた。