タイのドラマ音楽を語る上で欠かせない存在——それが 「OSTの女王」Fymme Bongkot(フィーム・ボンコット)。
90年代後半から2000年代にかけて、彼女の歌声は数多くのドラマを彩り、視聴者の心に深く刻まれてきました。曲を耳にすればドラマの名シーンが蘇る、と言われるほど国民的人気を誇ります。
そんな彼女が、先日上野Stellaでプレミアライブを開催。会場は大きな感動に包まれました。
そして今回、タイナウ編集部がFymme Bongkotさんに独占インタビューを行うことができました。タイドラマと共に歩んできた名曲の数々、そして初の日本公演に込めた思いを語っていただきます。
──日本でのライブは何回目ですか?? 日本でのライブが決まった時にお気持ちを教えてください。
実は今回が、日本での初パフォーマンスです。
日本でパフォーマンスできるなんて本当に光栄です。実は私、日本が大好きで、これまでも何度も来ているんです。今年だけで5回も!でも、これまで歌を披露するチャンスはなかったんです。
今回は、歌う機会をいただき、本当にありがとうございます。
──日本の音楽ファンについて感じていること、印象に残っているエピソードはありますか?
私はフジロックが大好きで何度も行っているのですが、初めてフジロックに来たとき、日本の方々が心から音楽を楽しんでい姿を見て本当に感動しました。
雨でも暑くても、皆さん音楽を心から楽しんでいて、とても礼儀正しく、整然としていて。音楽に対する情熱がすごいんです。そんな日本人の姿が大好きです。
──タイの有名オーディション番組The Voice Thailand注目から始まり、多数のドラマOSTに起用されドラマOSTの女王と称されるまでになったフィームさんですが、楽曲制作や選曲の際に、最も大切にしていることは?
私は『The Voice Thailand』に出演したことで、OST(ドラマの主題歌)を歌う機会を得ました。私の声がちょっと女性らしいので、悲しい女性の物語に合うと言われたんです。最初の曲の評判が良くて、次々にドラマ曲の依頼が来るようになったんです。
ドラマ音楽を作る上で気をつけているのは、曲の背景や意図をできる限り理解することです。たとえばドラマの曲であれば、ドラマのストーリーやキャラクターを理解して、それを音楽で表現できるように努力しています。
──影響を受けたアーティストやロールモデルは?
好きなアーティスト、影響を受けたアーティストについてですが、本当に沢山います。
一緒に仕事をしたアーティストにも沢山影響を受けています。
世界中のアーティストのインタビューや記事を読むことでも刺激を受けますし、年齢は関係なく、若い人からも年上の人からも、それぞれの要素を自分の中に取り入れている感じですね。だから、誰が一番影響を与えたかは選べません。みんなから少しずつもらっているんです。
──長年にわたりOSTで活躍されていますが、いま一番表現したい音楽ジャンルやテーマは?
OST以外にも自分でプロデュースしたい曲はたくさんあります。
もちろんOSTは得意ですが、他のジャンル、例えばR&Bやエレクトロニックなど、いろいろ挑戦してみたいです。
私の声にはポップスが合っていると思うんですが、新しいことにもどんどん挑戦したいですね。
最近ではDJにも興味を持ち始めています。日本のDJはとてもクリエイティブで魅力的ですよね。
タイではヒップホップもよく聴いていて、タイのヒップホップは、ストーリー展開が面白いんです!
──これまでのキャリアの中で、今が「転機」だと感じる瞬間はありましたか?
私のキャリアにおける大きな転機はコロナでした。
コロナで世界が大きく変わりましたよね。私自身も、それまで色々な場所で、例えばアイルランドなどでショーをしていたのですが、全てストップしてしまって。その時は広告代理店での仕事にも集中するようになりました。
でも音楽への愛は変わっていません。今も音楽を本当に楽しんでいます。
──近年タイの音楽業界の変化が著しいと思うのですが、その変化についてどのように思っていますか?
最近のタイ音楽の急速な変化についてですが、とても興味深いと思います。新しい世代が登場して、音楽の作り方も変わりました。
私たちの世代では、1曲を作るのに長い時間をかけて「まだまだ完成じゃない」と悩みながら作っていました。でも今の若い世代は、2時間で曲を作ってTikTokにアップして、それがバズればフルバージョンになる。
制作スピードも速くなりましたし、K-POPの影響も強く受けています。特にLisa(BLACKPINK)が人気になってから、T-POPも変化して、ダンスと歌の両方をこなすアイドルが増えました。
今では歌がうまいだけでなく、見た目もアイドルっぽさが求められる時代になっています。それに、今の若い世代は自分でプロデュースもするし、機材やリソースも豊富。
昔はスタジオに行って、プロデューサーに頼んで…というプロセスでしたが、今は1台のラップトップとAIで完結してしまいます。
すごく速くて、でも面白い時代だと思います!
──ファッションやメイクアップのセンスが注目されていますが、自分のスタイルにおけるポリシーは?
私はファッションやメイクも好きで、昔は髪をピンクとか青とかいろんな色に染めていました。
今は大人になって、黒や白などシンプルな色が好きです。シンプルな方が落ち着いていて、最近の自分に合っている気がします。
最近では、メイクはナチュラル寄りにして髪型に力を入れるようになりました。
──柔術をしている写真がインスタグラムに度々登場しますが、始めたきっかけは何ですか?
実は私、数年前に体調を崩して入院したことがありました。それで健康のために運動しようと思って、最初はフィットネスを始めたんですが続かなくて…。
そのとき、友人に紹介されて始めたのが「Jiu Jitsu(柔術)」でした。今では私にとって大切なスポーツであり、仲間もできて、すごく楽しいです。
日本でも柔術は有名ですよね。日本に来ても、柔術ジムを探して通っているんです!
──フィームさんのインスタグラムには猫がたくさん出てきますが、フィムさんは何匹猫をかっているのですか?名前は?
全部で5匹猫を飼っています。全部保護猫です。道で見つけて、家族を探したけど見つからず、私が育てることにしました。
全員メスで、名前は「ミール」「オータム」「ウィンター」、そして「タイニー」と「ハーモニー」。
「タイニー」はとても小さくて目も開いていない状態で見つけたから、「タイニー」。
「ハーモニー」は、ある日プレゼンで「ハーモニカ」という商品を紹介していたときに見つけたから、そのまま「ハーモニー」にしました(笑)。
私と猫たちのタトゥーが腕にありすが、あとからタイニーとハーモニーが来たので、最初の三匹分だけ!
──日本食で好きな食べ物は何ですか?
日本食は全部好きですが、一番は「牛肉料理」。しゃぶしゃぶが大好きです!
日本に来たら、牛肉ばかり食べてしまいます(笑)。
──逆にタイに来る日本人におすすめのタイ料理はありますか?
日本の人に紹介したいタイ料理は「ソムタム・パラー(発酵魚入りのパパイヤサラダ)」です。匂いが強いですが、これが本物のタイの味。
私のお気に入りの食べ方はオムレツと一緒に食べること。普通は鶏肉などと食べますが、私は卵と合わせるのが好きなんです。
辛さは「ピッノイ(控えめに)」で注文してみてください。タイ人は本当に辛いのが好きなので(笑)。
──沢山日本に来ているフィームさんですが、日本で行ってみたい場所はありますか?
行ってみたい日本の場所は「福岡」「京都」「大阪」。
日本には何度も来ているけど、この3つはまだ行ったことがないんです。
大阪はすごく楽しくて、食べ物もたくさんあるって聞いているので是非行って見たいです!
──日本のファンに向けてコメントをお願いします。
日本のファンの皆さん、応援してくださって本当にありがとうございます。
もしまた日本でパフォーマンスする機会があれば、ぜひ来てください。
新しい曲やプロジェクトができたときも、応援してもらえたら嬉しいです。本当にありがとうございました!
長年にわたり数々の名作タイドラマを支えてきたFymme Bongkot。
インタビューを通して語ってくれた、日本のファンへの深い感謝と音楽への変わらぬ情熱は、まさに「OSTの女王」と呼ばれるにふさわしいものでした。
今回の日本初ステージでは、その圧倒的な歌声と温かな人柄で会場を魅了し、観客に忘れられない時間を刻みました。観客全員が一緒に歌えるほと浸透しているフィームさんのドラマOSTの数々。
これからも新しい音楽や挑戦を通じて、私たちにどんな物語を届けてくれるのか——その歩みからますます目が離せません。
Fymme Bongkot入門に聴いてほしい名曲セレクション
最後にまだFymme Bongkotを知らない方に、おすすめの3曲をご紹介!
フィームさんの歌声を通じて、タイドラマの名シーンを追体験してみてください。きっとその魅力に引き込まれるはずです。
1.4億回再生!!ドラマ『私を忘れないで(อย่าลืมฉัน / Yah Leum Chan)』OST
「เจ็บแค่ไหนก็ยังรักอยู่(どれほど傷ついてもまだ愛している)
Yes’sir Daysとのデュエットで、Fymmeさんの代表曲のひとつ。
6600万回再生!ไม่เจ็บอย่างฉันใครจะเข้าใจ (Ost.สามีตีตรา) – ฟิล์ม บงกช 【OFFICIAL MV】
ไม่เจ็บอย่างฉันใครจะเข้าใจ(直訳:私ほどの痛みを誰が理解できる?)はドラマ『สามีตีตรา(Samee Tee Traa/夫に刻まれた烙印)』 のOST(挿入歌)として使用され、大ヒット。
880万回再生!ขอบคุณที่เธอเข้ามา(直訳:出会ってくれてありがとう)
(ドラマ『愛しい借金(ลูกหนี้ที่รัก / Look Nee Tee Rak)』OST)
[文・構成・写真/タイナウ編集部]