個性派?実力派?どっちもか…。切なすぎてむしろ癒される名曲。 MONICA – WONDER #サワディーワタナベ的タイポップ/T-POP鑑賞記

ThaiNow編集部

新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。

今回聴いたのは、タイのシンガーソングライター、MONICA「WONDER」です。

タイポップサーフィンを楽しんでいて見つけたアーティストで、どの楽曲もいいし、MVもユニーク。
日本でタイポップを聴こうと思うと、やはり業界的に力を入れているK-POPを標榜したグループや、ハイレベルな歌唱力を持った俳優陣の楽曲が表に出てくる印象があります。

そんな中、個性的なシンガーソングライターを発見できたのはとてもうれしい。
シンガーソングライターというからにはもちろん作詞作曲、本人です。

MONICAについてちょっと調べたところ、2003年生まれで…、

ん? …2003年生まれ!?
いま22歳!? そしてこの曲3年前ですけど!?

今回の紹介曲ではないのですが、彼女のYoutube最多再生回数曲は約6300万回再生(これも3年前)
すげえなあ…。

さて、曲ですが、めちゃくちゃセンスいいです!
聴けば聴くほど魅力を増す、借り物ではない感じのメロディー
です。
声は、張ってないけど密度があって音に埋もれない存在感があります。
自然に歌っているのでうっかり流しちゃいますが、けっこう急激な音の高低があるメロディーをふわっと見事に乗りこなしてます。
うまいなあ…。

音づくりもいいです。まず無駄な音が無い。
それでいて、そぎ落とされたパートそれぞれはとても丁寧に緻密につくられています。
イントロから温かみのあるギターが進行を支えていて、そこに割とスタンダードロックな音のドラムとベースが加わります。
隠し味に、「ギュウォ~ン」という感じのぐしゃっとしたおもしろいエフェクトをかけたベースが入っていて、これがMONICAのとんがったファッションと共に、この曲にちょっととがったオルタナ感を加えています。

それよりも何よりも、テーマのフレーズ内やサビの合間に入る鉄琴!
これがバンドサウンドを一気に激エモに持っていってます。

全体的に、歌と音の重なりをものすごく大切にしてつくられた印象です。
歌と重ねる所、歌の隙間にスっと入れる音。
これがきれいに成立しているのは、作詞作曲、演奏も自信が行う彼女の頭の中に明確なイメージがあるからでしょう。

シンガーソングライターということで、過去の動画を観ていると番組のスタジオライブなどでもバンドスタイルで演じることが多いようです。生演奏ライブの映像があれこれあるのはとてもうれしい。
個人的には、本人がアコギを弾く、今回紹介曲のライブ動画が好きです。

ライブでも最低限のパート構成でこの世界観が表現できるってすごい。
楽曲の芯の強さ、深い音楽愛を感じます。

MVは独特の雰囲気を放っていてクセになります。
基本的にずっとスローだし構図不思議すぎるし…。

ベッドに突っ伏したMONICAから幽体離脱した自分を、これまた本人がスプラトゥーンばりにシューティングしてやっつけるシーンなんか最高です。

とはいえ、これだけ映像にユーモアを入れつつ、雰囲気としては全編ずーっと物憂げなのは楽曲と歌の力です

それもそのはず。この曲、失恋の歌なんですね

何かを考えたところでどうにもならないことをわかってはいつつも、考えることでしか今を過ごすことができないような、多くの人が体験して苦しんだであろうモヤモヤ。

その辺を意識してもう一度先ほど紹介した幽体離脱シーンを観ると、先ほどの「おもしろ~」の解釈は真逆になります。

「このモヤモヤを、こんな風にバンバン撃って消せちゃえばいいのに…という切なくて真剣な、やりようのない心の声だったんですね…。

芸が細かいことに、6体いる離脱MONICAは全員髪型が違います。
これは、「ああでもない、こうでもない、あの時どうだったっけ? どうすれば正解だったのかな…?」と、モヤモヤの中にもいろんな回想や妄想、後悔や憤りが次から次へと出てきてしまう苦しみを表しているんでしょう。

パッと見、ユーモラスなのに、底なしに悲しい…。

エキセントリックな表現ながら妙にリアリティーがあるのは、そういう実体験があるからかもしれないですね。

悲しいのに、人を癒す不思議な力を持った名曲です。

プロフィールを振り返りましょう。2003年生まれ、この曲3年前。
末恐ろしい表現力と伝達力…。

最近では2025年7月に新曲が出ていますが、これがラッパーフィーチャリングで全然違った雰囲気のものになっていておもしろいのでまた別の記事で紹介したいと思います。

最後に、ぜひこのMVのラスト、監督の「カット!」の後の彼女の笑顔を見てみてください。
すごくかわいい!
…のですがそれだけでなく、この無邪気っぽいけど悟った感じの微笑み。

私の印象は、「人生何週目?」です。

[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]

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