新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
曲も音もいいけど、これは音と映像セットでさらにで楽しめる力作です!
イントロからフックが効いてますね。
ざらついた質感のモノクロ静止画パラパラ映像、しかもネガポジ反転カットも入れて不穏な雰囲気。
早速怪しげな覆面たちに取り囲まれてさらに不穏な雰囲気。
そして静止画アニメーションならでは! 最初の覆面は地面からにょきにょき生えてくるピタゴラスイッチ的な凝りよう。(あ、不穏な雰囲気がやわらいでしまった…)
ここまでご覧になるともうわかるように、この曲はBUSの最年長リーダーであるALANが大々的にフィーチャーされています。
タイトル「BOSS IN THE BUILDING」=リーダーALANを予感させてこのイントロ映像、という時点でもう鳥肌モノの演出ですね。
歌詞もハードボイルドでかっこいいです。
敵は叩きのめす。 大切なものは守る。 みたいな感じのニュアンスが感じられて曲と映像と雰囲気ぴったりです。
「かかってこいよ、ボスはここにいる」
「頼ってくれよ、ボスはここにいる」
みたいな解釈を勝手にしましたが、しびれますねー、かっこいい!
ボスの存在をBUSの多彩なメンバーたちがリスペクトして戦う姿勢を宣言する感じ、たまらんです。
実力派の武将が大将に率いられていることを喜んでいるような感覚。
グループとしてもこの曲を期に結束が強まったのではないかと想像するくらいみんな活き活きして見えます。
サビを締める「BUS is in the building, the BOSS is in the building」というフレーズも小気味よく決まってます!
さて、MVに戻りまして、イントロのモノクロパラパラからカラー動画になるわけですが、
何かがおかしい…。
・モノトーン~ブラウンに統一された色が少ないファッション
・肌直接のスタッズやツノなどの異色のスタイリング
・パンキッシュなアクセサリーなどのハードなアイテム
・背景は色彩を配した退廃的な世界観
・いろんなものが破れていたり壊れていたり錆びていたり、雑然としていて妙な埃っぽさが強調されている
・そこかしこに転がる武器の数々…
これは映画MADMAXシリーズの世界観ではないでしょうか。
世界中のクリエイターに多大な影響を与えた作品として知られているので、オマージュがあっても不自然ではありません。
後半の間奏&ダンスシーンではまさにマッドマックスに登場するスピーカー山積み演出を意識したようなセットが組まれています。拡声器みたいなラッパ型スピーカーまでちゃんと置いてあるから間違いないんじゃないでしょうか。
とどめに、ALAN、後半でバズーカぶっ放してますもん…
ここまで映像中心に書きましたが、最後に音の特異な点に触れたいです。
先ほど触れた間奏&ダンスシーン、3:40くらい~の音です。
この激しく尖ってハウリングしているような金属的な音。
ボーイズグループにこの音使っちゃいますかっていう過激な音。
これは元ネタとまでは思いませんが、「テクノモーツアルト」という異名までついたテクノ界の異端児&レジェンド、Aphex Twinが使っていた変態的な音を髣髴とさせるくらいクレイジーな音づくりです。
この曲の4:45くらい~、どんどんぶっ壊れていく時にキラーサウンドとして使われている音に近い。
これだけ多彩、カラフルなメンバーのBUSの楽曲で無彩・退廃の世界をコンセプトに持ってくるのは潔いというか挑戦的というか、ものすごく新鮮です!
そして、デビュー曲のキラキラっとした世界観からこんなとんがった曲まで歌いこなし演じ切るBUSってすごい。
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]