都会的なのにノスタルジック!真夜中のドア / Stay with me – Miki Matsubara | Cover by PUNCHIE #サワディーワタナベ的タイポップ/T-POP鑑賞記

ThaiNow編集部

新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。

今回聴いたのは、タイの大人気グループ4EVEのメンバーPUNCHIE(パンチ)が歌う、日本のシティポップの名曲カバー!
松原みき「真夜中のドア / Stay with me」です。

都会的なのにノスタルジックで味わい深い。
いやー、いい曲を選んでくれましたね…。

冒頭「やあ、私の恋人」のひと言でPUNCHIEが持つ声の個性が伝わります。
こういう雰囲気の人がこんな声だったら最高に似合うだろうな~… が、そのまま!
という声です。

高くて細いが芯が強い。周波数とか測ったら何か特殊な波形とかにならないだろうか?と思ってしまうくらい、パシーン!と周りの音にお構いなしで届く声。

こんな声だったら、賑やかな飲食店でも「すみませーん」が一発で届くんだろうな、と、謎のシチュエーションを思い浮かべてうらやましくなってしまいました。

まずMVそのものの仕立てについて。
タイポップ/T-POPは映画のような仕立てのものすごく凝ったMVも多く、最後は楽曲のリフレインとともにエンドロールが…という壮大な感じですが、こちらのMVは対極。ゆるっとふわっとしたこういうMVも、肩の力が抜けていて見ていてとても心地よいですね。

もちろんエンドロールもありません。イントロから粗い画質の手ブレカットも多用し、リラックスして楽しんでね、という意図が伝わってきます。

そんな感じでシティポップにアプローチするというのは、意外でおもしろい所をついてきたなーという印象です。
日本のシティポップといえば昨今、国内でのリバイバルはもちろん、地域を問わず海外でも評価されて大変な盛り上がりを見せているジャンルです。

日本では大瀧詠一チルドレンと言ってもよいであろう山下達郎がずっと第一線で活躍しており、往年のシティポップの音楽的レベルの高さもあって、今をときめくミュージシャンもこぞってリスペクトしていますから、ある意味国内では往年のシティポップから今のポップソングは地続きと捉えることができます。

一方で、海外においてはそういった系譜のようなものが無くても「聴けばわかる」とばかりに高い評価を受けている印象があります。
先述の大瀧詠一がレコード会社と契約する際、お金ではなく、当時最新鋭の16チャンネルのマルチトラックレコーダーを提供してもらう代わりに、3年でアルバム12枚を制作する という条件だったことは広く知られています。
精神も腕も、思考回路までまさに音楽職人。

そんなハイレベルなシティポップの世界にあって、松原みきがこの「真夜中のドア」でデビュー、大ヒットします。
時間が流れ2020年、インドネシアの歌手Rainych(レイニッチ)がこの「真夜中のドア」をカバーすると、Spotifyなどで瞬く間に話題となったそうで、Youtube動画は今では1000万再生を超えています。

へえ、そういう経緯があるんですね。
「いいものはやっぱりいい! いいものは伝わるものなんだ」というのが実感できるうれしい現象です。
ネットの世界はいろいろあれど、いい作品が広がり、多くの人がリーチできることは純粋に喜ばしいことです。

さて、PUNCHIEのカバーに戻りましょう。
冒頭の「やあ、私の恋人」の声そのまま歌っている感じがとてもいいですね。
ビブラートもせず、いい声で本当に口ずさんでいるだけ、といった歌唱が新鮮です。
歌唱力や歌の技は使いようであって、だからこそ、敢えて「技を使わない」というアプローチもあるわけです。

これがばっちり成功していて、原曲が持つ、「都会的だけどノスタルジック」という魅力を新しい角度から照らしているようなアレンジです。

楽曲は「真夜中のドア」ですが、いつでも楽しめる音と映像。
また1曲、新しいタイポップを発見できました!

[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]

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