新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたのは、タイのエレクトロポップシーンで独特の存在感を放つ3人組ユニット、KIKIの「Baby」です。
なんておしゃれなサウンドなんでしょうか。しかも、ただおしゃれなだけではありません。
一聴してわかる音楽的バックグラウンドの豊かさ!
エレクトロ/エレクトロポップというカテゴリーで紹介されているものの、その音はライブ感あふれるアンサンブルで構成されています。ちょっとエレクトロという枠に入れてしまうのももったいないくらいです。
オルタナという紹介の仕方もできるかもしれませんが、枠を広げるということはイメージしづらいということにもなるのでいまのままでいいのかもしれませんね。
キラッとしたシャープなギターのカッティングはダフトパンクが大ヒットさせた「Get Lucky( feat. Pharrell Williams and Nile Rodgers)」の時のナイル・ロジャースのサウンドを彷彿とさせます。
エレクトロでありながら生ギターが音の軸を担うという点では、KIKIの音づくりはこの時のダフトパンクの音のバランスに近いものを感じます。
そして、ギターのNontが使っているギターのタイプもナイル・ロジャースと同じストラトキャスタータイプです。
エレクトロというと、ジャンル的にはシンセサイザーが音を支配しているサウンド構造をイメージしますが、KIKIの場合はギター、ベースが前に出ていて、シンセは土台と、音の厚みを下支えしているように感じます。
KIKIのサウンド哲学というか姿勢というか、何を大切にしているのかがじんわり伝わってきてうれしくなります。
この「Baby」も「Get Lucky」も、一番最後にちょっとシンセによる印象的なメロディーが登場してエンディング、という点も共通しているのでもしかしたらどんぴしゃで意識した可能性もあります。
そしてベースラインがめっちゃくちゃかっこいいんですが、この音はなんだろう…。
KIKIにはライブ演奏動画(コンサートではなくスタジオライブ)が結構あってこれも人気なのですが、その時はエレキベースを弾いています。
(※このスタジオライブ、演奏うますぎて音だけ聴くとレコーディングと間違うレベルです)
でもこのレコーディング楽曲に関しては、「限りなく人が弾いている風なシンセベース」なのではないかな、と推測します。
YMOの細野晴臣が楽曲によってエレキベースを弾いたり、シンセでベースを弾いたりしていたようなことですね。
このマットな質感、音の入り方と消え方はリアル弦楽器のベースでは出せないんじゃないかと思います。
手弾きだったら神演奏、シンセだったら神調教!
KIKIの3名はボーカル+ギター+ギターなのでメンバーのパートではないのかもしれませんが気になって気になって。
いずれにしても神なベースサウンドが展開されています。
発見できてよかった…。
次はボーカルです。皆さんお気づきでしょうか、かたくななまでにビブラートを排したフラットでソリッドなボーカルスタイルです。
このスタイルが、何よりもこの曲に都会的なおしゃれさ、洗練、透明感を与える決定打になっていると感じます。
ボーカルなんですから、普通はどうしても歌のうまさをアピールしたくなるものだと思いますが、ノンビブラートを徹底する潔さ。
はっきりとした意図と自信がないとこれはできません。
日本のおしゃれミュージック代表の渋谷系の女性ボーカルだってビブラートしてましたもん。
あ…、渋谷系の女性ボーカルに意図と自信がなかったみたいになっちゃいましたがもちろんそうではありません。あくまで意図と方向性です。
KIKIは他の楽曲も魅力的で、どの曲も「Baby」同様、エレクトロポップとはいえ生音との絶妙なバランス。
日本でも何の抵抗もなく受け入れられそうな印象で、実際に日本の優れたインストバンド、Ovallとのコラボも実現しています。
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この曲もポップでかわいらしく、でも音はすっきりドライで洗練されていて素敵です。
才能って、出会うべくして出会うものなんですねえ…。うらやましい。
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]

