タイホラーの金字塔が描く、電話一本ですべてが叶う、欲望の代償は“死”だった… 『999-9999 ต่อติดตาย』人間の弱さと結末#タイ人エディター・ギフトの「もっと知りタイ!」

ThaiNow編集部

[写真 @SahamongkolFilm公式ウェブサイトより]

タイのバンコク出身のエディター、ギフト(←名前です)がタイの現地情報、タイポップの歌詞、スラング、ネット用語を独自に読み解く!読めばもっと理解が深まる、楽しめる!

タイホラー映画の歴史を語るうえで欠かせない作品が、2002年に公開された『999-9999 ต่อติดตาย』です。原題に含まれるタイ語の「ต่อติดตาย(トー・ティット・ターイ)」は、「電話をつなげば死に至る」「つながった瞬間から破滅が始まる」といった意味合いを持つ、非常にストレートで不吉な表現となっています。


[写真 @SahamongkolFilm公式ウェブサイトより]

作中では、「999-9999」という謎の電話番号にかけると願いが叶う代わりに、必ず“死”が付きまとうという設定が描かれます。このアイデアは、当時タイ国内で広く知られていた有名な都市伝説から着想を得たものです。


[写真 @Naewna公式ウェブサイトより]

電話という日常的で身近なツールを恐怖の媒介とした点が大きな特徴で、「もし自分がこの番号を知ってしまったら?」と想像させる、現実と地続きのリアリティが観客の好奇心と恐怖心を強く刺激しました。この不気味なコンセプトにより、本作は公開当時から大きな話題を呼び、タイホラーを代表する一本として強い印象を残しています。

作中で登場する電話番号が「7桁」である点も、本作の時代性を象徴する要素のひとつです。かつてのタイでは電話番号は7桁が一般的でしたが、現在では
・02など2桁から始まる固定電話
・080など3桁から始まる携帯電話
といった番号体系へと変化しています。この違いからも、本作が2000年代初頭の空気感を色濃く閉じ込めた作品であることがうかがえます。


[写真 @Naewna公式ウェブサイトより]

また、本作における“死の描写”には、単なる恐怖演出を超えた「先の読めない緊張感」があります。


[写真 @TrueID公式ウェブサイトより]

観客は「次はどう死ぬのか」「どこで破綻するのか」を予想しながら見守ることになり、その感覚は、2000年に第1作が公開された『Final Destination(ファイナル・デスティネーション)』シリーズを想起させます。明確な因果関係は示されていないものの、当時すでに話題となっていた同シリーズから、何らかの影響を受けていた可能性は十分に考えられるでしょう。

監督を務めたのは、国際的に活躍するCMディレクター出身の映像作家、Peter Manus(ピーター・マナット)です。彼はアメリカの名門・南カリフォルニア大学映画芸術学部(USC Film School)で、脚本と犯罪学という2つの分野で学位を取得しています。

USC Film Schoolは、George Lucas(ジョージ・ルーカス)(『スター・ウォーズ』シリーズ)、Robert Zemeckis(ロバート・ゼメキス)(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、Bryan Singer(ブライアン・シンガー)(『X-MEN』シリーズ)など、数多くの著名なハリウッド監督を輩出してきた世界的な映画教育機関として知られています。


[写真 @SahamongkolFilm公式ウェブサイトより]

映像表現のみならず、人間心理や犯罪の構造にも精通しているピーター・マナットならではの視点が、『999-9999 ต่อติดตาย』におけるリアルで不気味な恐怖演出を支えています。日常に潜む「欲望」や「好奇心」が、いかにして破滅へと転じていくのか。その過程を説得力をもって描き出している点も、本作が高く評価される理由のひとつです。


[写真 @Netflix公式ウェブサイトより]

キャストには、当時すでに注目を集めていた若手俳優たちが集結しました。
主演を務めたHugo(ヒュゴ・チュンラチャック)は、俳優であると同時に国際的に活躍するミュージシャンです。彼が手がけた楽曲「Disappear」は、Beyonce(ビヨンセ)のアルバム『I Am… Sasha Fierce』に収録され、大きな注目を集めました。さらにヒュゴは、Jay-Z(ジェイ・ズィー)のレーベルと契約した初のタイ人アーティストとしても知られ、タイ音楽史において特別な存在となっています。

Hugo

女性の主人公を演じたSririta(リター・シリター)とPaula(パオラー・テーラー)は、世代を超えて愛されてきたタイを代表する人気女優です。本作公開当時はトップ女優として絶大な支持を集め、その後も長年にわたり第一線で活躍しました。現在は2人とも女優業からは距離を置いているものの、母として、そして実業家として新たなステージで注目を集め続けています。その生き方や発信は今も多くの人々の共感を呼び、変わらぬ存在感を放っています。

Sririta


Paula

 

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『999-9999 ต่อติดตาย』が描いているのは、怪異そのものではなく人間の弱さです。「簡単に願いを叶えたい」「真実を確かめずにはいられない」という感情が、どれほど危険な結果を招くのかを、本作は容赦なく突きつけてきます。


[写真 @จับผิดหนัง公式Facebookより]

日常に潜む恐怖、都市伝説的な設定、そして若きスターたちの存在感。それらが高い完成度で融合しているからこそ、『999-9999 ต่อติดตาย』は今なお語り継がれるタイホラーの名作であり続けています。


[写真 @SahamongkolFilm公式ウェブサイトより]

ネタバレを承知で観てもなお、電話をかけるシーンの緊張感と結末の冷酷さは色あせません。
タイホラーを知るうえで、欠かすことのできない一本です。

[文・構成/タイナウ編集部]

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