実はタイで社会現象を起こしていた!DaouとコラボしたURBOYTJのグループ、3.2.1 #タイ人エディター・ギフトの「もっと知りタイ!」

ThaiNow編集部

[写真 @ilovekamikaze公式ウェブサイトより]

タイのバンコク出身のエディター、ギフト(←名前です)がタイの現地情報、タイポップの歌詞、スラング、ネット用語を独自に読み解く!読めばもっと理解が深まる、楽しめる!

Daou(ターウー)の新曲をきっかけに、URBOYTJ(ユア・ボーイ・ティージェー)という名前を目にした人もいるかもしれません。「อย่าขยับ (Don’t Move) | SPECIAL COLLABORATION」でフィーチャリングアーティストとして名前を見て、「URBOYTJって誰?」と気になった人も多いと思います。

実はURBOYTJは、かつてタイで社会現象を巻き起こしたグループ・3.2.1(トリー・トゥー・ワン)のメンバーの一人です。2010年代前半のタイでは、3.2.1の楽曲が流れれば国中の人が歌い、踊るほどの人気を誇り、まさに「知らない人がいない」存在でした。

そこで今回は、今のT-POPが海外へ広がる前から、タイ国内で大きなブームを生み、歴史を刻んできたグループ、3.2.1について紹介します!


[写真 @RS公式ウェブサイトより]

3.2.1は、RS Group傘下のKamikazeから2010年にデビューしたT-HOP(タイヒップホップ)グループです。女性ボーカルのPoppy(ポッピー)※筆者の同級生、歌とラップを担当するGavin(ガウィン)、ラップと音楽制作を担うTJ(ティージェイ)(現在のURBOYTJ)という3人編成で、当時のタイでは珍しかった“ダンス×ヒップホップ×ポップ”を前面に押し出したスタイルが大きな話題となりました。


[写真 @kamikaze公式Facebookより]

デビュー初期に注目を集めたのが「เขย่า(Shake it ah!)」です。タイトル通り「とにかく揺れて、踊って、楽しもう」というシンプルなメッセージと、誰でも真似できる振り付けが特徴で、イベントや学校行事を中心に一気に広まりました。

続く「แค่ที่รัก(My Boo)」は、3.2.1を一躍ティーンのスターへと押し上げた代表曲です。好きな相手へのストレートな気持ちを、軽快なビートと可愛らしい歌詞で描いたこの曲は、ラブソングとしても大流行し、音楽番組やラジオの常連となりました。

そして、2013年、彼らの名を“社会現象”のレベルにまで押し上げたのが「รักต้องเปิด/ラクトンパード(แน่นอก/ネンオック)[Splash Out]」です。Baitoey RSiam(バイトーイ・アールサイアム)とのコラボレーションによるこの楽曲は、「好きなら気持ちを隠さず、思いきり表現しよう」というメッセージと、中毒性の高いフレーズ、強烈なダンスが組み合わさり、爆発的ヒットを記録しました。YouTube再生回数は2億200万回を超え、テレビ、CM、フェス、ナイトマーケットまで、タイ中のあらゆる場所で流れ、老若男女が踊る光景が日常となりました。

この曲が単なるダンスヒットで終わらなかった理由のひとつが、タイ語ならではの巧妙な言葉遊びです。

タイトルに含まれる「แน่นอก/ネンオック」は、本来「胸が苦しい」「胸の内がつかえている」という意味で使われる言葉です。体調不良やストレス、不安などを抱え込み、内側が息苦しい状態を表し、感情面では「หนักอก/ナックオック(気持ちが重い)」に近いニュアンスを持っています。

しかし「อก/オック」という単語には、「胸の内」という抽象的な意味だけでなく、文字通り「胸=バスト」を指す身体的な意味もあります。この二重の意味を生かし、この曲では「恋心を胸に閉じ込めて苦しいほど好きだ」という内面的な感情と、バストが大きく、体にフィットした服で少し窮屈そう、息苦しそうに見えるという、視覚的でセクシーなイメージが重ね合わされています。

ミュージックビデオやステージでは、タイトな衣装とダンスによって、その意味が誰の目にも分かる形で表現されました。特に、セクシーなイメージで知られるBaitoey RSiamの存在が、この言葉遊びをより分かりやすく、意図的なものにしています。

つまりこの曲は、「恋心を溜め込まず、愛は開くべきだ」という真面目なメッセージと、「見た目にも“แน่นอก”で少し息苦しそう」という、少しやんちゃで思わず笑ってしまう意味を同時に成立させているのです。あからさまではないものの、意味を理解するとニヤッとしてしまう。この絶妙なバランスこそが、「รักต้องเปิด(แน่นอก)[Splash Out]」が世代や性別を超えて広まり、国民的ヒットとなった大きな理由でした。

その後も3.2.1は、グループを代表する大ヒット曲のひとつ「มีอีกไหม(Want More Shawty)」で「本当はあなたが好きだけれど、もしダメなら、他にはあなたみたいに可愛い人はいませんか」という少し照れた恋心を、ポップなメロディで描いています。

続いて発表されたもうひとつの大ヒット曲、「ปล่อยให้ผ่านพัดไป(Let it go)」では、想いが届かなかった相手に向かって「私のことは気にしなくていい。愛してくれなくても大丈夫だから、私の気持ちはあなたの中で手放していい」と伝える失恋を描いています。中テンポでEDMテイストを取り入れたサウンドは、切なさだけに沈み込まず、前に進む感情とのちょうどよいバランスを生み出しています。こうした楽曲を通して、3.2.1は単なるパーティーソングにとどまらない幅広い表現を見せました。

しかし、2016年、メンバーそれぞれが新たな道へ進むため、グループとしての活動に一区切りをつけました。

現在は、TJとGavinがソロのヒップホップアーティストとして第一線で活躍し、Poppyも多方面で活動を続けています。そして、2022年、「Kamikaze Party 2022」で3.2.1は再集結し、当時を知るファンにとっては忘れられない瞬間となりました。


[写真 @RS公式ウェブサイトより]

今あらためて彼らの楽曲を聴くと、そのエネルギーと楽しさは少しも色あせていません。もしこれまで知らなかったとしても、3.2.1は「その時代、タイ中が知っていて、誰もが踊っていた」確かな存在だったのです。

この記事を書きながら、筆者自身も学生時代に聴いていた数々の楽曲をあらためて聴き返し、とても懐かしい気持ちになりました。今後も、現在のT-POPへとつながっていく、前の世代のT-POPアーティストやグループを紹介していく予定です!ぜひ楽しみにしていてください!

[文・構成/タイナウ編集部]

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