新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたタイの人気ガールズグループ、ALALAの「SWEET LIES」です。
タイトルにも書いたように、この曲、本当にちょうどいい~♪という感じなのです。
楽曲そのものもサウンドも、歌を含むパフォーマンスもハイレベルな位置を保ちつつ、それら全てがなんとす~っと自然に入ってくることか。
サウンドはストリングス系のシンセを効かせつつ、ハープのようなポロンポロンという音が奥の方でいい仕事をしています。でも主張しすぎない。
「王道ポップスです!いつでもどこでも聴いてね!」というおおらかさを感じます。
とてもいい曲ながら、特異なまでのこの「ちょうどよさ」はどういうシーンで光るのだろう?
と考えてみて思い当たったのは、ドライブですね(サワディーワタナベはほぼペーパードライバーです)
運転中に気分よくさせてくれて、かつ何も邪魔をしなく風景と共に自然に過ぎ去っていく…そしてまた同じこの曲がかかっても、決して「またこの曲か」とならない絶妙な存在感。
これは狙ってつくろうとしたら至難の業ではないかと想像します。
メンバーの歌唱もこれまたとってもよくて、なんでしょう、この個性のせめぎ合いのようなエンターテインメント界にあって、少しでもはみ出ようと考えてもいいものを、ALALAのメンバーは全員がハイレベルでありながら、極端に言うと、全員が楽曲全体のクオリティの底上げ要因のような職人仕事をしているように感じます。
これはすごいというかウルっとくるというか…。
非の打ちどころがない上に悪目立ちもしない。やっぱ職人仕事です。
そんな「ちょうどいい~♪」この曲でサワディー的におもしろかったのは間奏ですね。
ここはサウンド的にプロデューサー/エンジニアがちょっと遊びを入れたのかな、と思いました。
大きな音で聴くとわかりやすいですが、02:28あたりからの間奏で、急に空間が歪んで奥行が深くなります。
そして、それまで優雅なシンセサウンドだった所に、硬質な、ガキーン!という感じの、太い鉄パイプをぶっ叩いたようなエッジの聴いた打音も入れています。
歌パートは流れるようにスムーズで、間奏だけ尖らせるってすごくかっこいい!
間奏で意表を突くというのは結構古くからの手法で、全然ジャンルは違いますがインパクトがすごいのはStingの「Englishman In New York」じゃないでしょうか。
ジャジーでセクシーな曲が謎のカオスなノイズに支配されます。そして何事もなかったかのように元の曲調に戻って歌が再開するという。
一瞬気を失っていたのか…? という離れ業アレンジは今聴いても衝撃です。
そんな一瞬の狂気を静かに含んだ「ちょうどいい~♪」この曲、あなたのプレイリストに入れてみてはいかがでしょうか?
たぶんリスト内に何回も入っていても「またか」とならないはず!
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]

