新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたのは、タイポップ/T-POPをリードするタイの大人気ガールズグループ、ALALAの「หยุดที่ U (AEIOU)」 です。
水のばしゃばしゃ音、やわらかなシンセメロディーとほわっとした音が重なり、一聴して楽園~♪な感じに引き込まれますね。
このリゾートな雰囲気はTWICE の「Alcohol-Free」あたりも思い出させます。
そのほわっと感は残しながらも、しっかりエッジの効いたリズムトラックとメンバーのシャープな歌声がほどよく引き締めるALALAならではのバランスを楽しませてくれるところがうれしいです。
そして登場する、ある種この曲の隠れたクライマックス! ここがいいんですよ。
♪
a a a a a a a a a
e e e e e e e e e
i i i i i i i i i
o o o o
ぱっと聴き、意味のない音をスタッカートで歌うこのパートはとても印象的ですね。
母音を発声するという点と、タイトルの「AEIOU」の字面から、私は学校の演劇部が稽古の最初にやっていた
「あ!・え!・い!・う!・え!・お!・あ!・お!…」
を思い出しました。
…思い出したというだけで、特に関係はありません。
ここで歌詞からタイトル、楽曲のストーリーに話を移します。
勘のいいあなたはお気づきかもしれません。
先ほど「母音のみ」と書きましたがこれは正確ではなく、違う発音が紛れているのです!
そう、IとUです。
「a=エ」
「e=イ」
「o=オ」
なのに、iとuは
「i=(イでなく)アイ」
「u=(ウでなく)ユー」
と発音しています。
これはもう、「I」と「YOU」が母音に紛れて抜け駆けしている
という表現ですね。
タイ語の原タイトル「หยุดที่ U」は「Uで止まる」という意味。
つまり、IがYOUで止まってしまう恋心の表現。
しかもこれがサビでは、「ユー ティー ユー(U)♪」というコンパクトな韻を踏んでいて、リズム、抑揚のあるキャッチーで充実感のあるフレーズに仕上がっています。
タイトルから歌詞、ストーリー、発音に至るまで、それらすべてを構造的にまとめあげるという、至難の業を実現しているんですね。
これに気づくと、aとeとoは「I」の目には止まらない「その他大勢」みたいな役割にもなるわけで、これもおもしろいです。
さて、そんな仕掛けがわかって楽曲の奥行がぐっと増した所で歌とサウンドの話に戻りましょう!
以前、同じくALALAの「SWEET LIES」を紹介した際、「ちょうどいい’常聴’ポップス」という表現をしましたが、今回の「AEIOU」でもその魅力は健在ですね。
プレイリストに入っていたり、間を置いてまたかかっていても「なんとなく気持ちよく聴ける」上に、「ちゃんと聴こうと思えば奥が深い」。
この両立って結構難しいと思います。
とっつきやすいのにやり込み要素がたくさんあるゲーム、みたいな感じでしょうか。
音の自然さ、まとまり感に加えて、ボーカルについても誰かの突出した強烈な個性を出していない&全体のレベルが高い…
このあたりの要素が揃わないとそういう作品は生まれないはず。
聴いていてだんだん曲に耳が慣れてきたころに
♪
a a a a a a a a a
e e e e e e e e e
i i i i i i i i i
o o o o
のスパイス的なアクセントが来て、飽きない構成になっているのがうれしい。
これがリピートさせちゃう隠し味なんですよね。
サワディーも何度聴いたか…。
「ちょうどいい’常聴’ポップス」をまた増やしてくれた1曲となりました!
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]

