BTS(電車)がテーマ“タイの国民的ラブコメ”30代OLの恋に国中が共感した映画「รถไฟฟ้า มาหานะเธอ」#タイ人エディター・ギフトの「もっと知りタイ!」

ThaiNow編集部

[写真 @SiamZone公式ウェブサイトより]

タイのバンコク出身のエディター、ギフト(←名前です)がタイの現地情報、タイポップの歌詞、スラング、ネット用語を独自に読み解く!読めばもっと理解が深まる、楽しめる!

タイ映画の中でも「国民的ラブコメ」と言われるほど長く愛されている作品が、2009年公開の 「รถไฟฟ้า มาหานะเธอ(Bangkok Traffic (Love) Story)」 です。タイ人が愛する恋愛映画として語り継がれる本作は、バンコクで働く30代OLのリアルな恋を描き、その共感度の高さから今も多くの人に支持されています。


[写真 @SiamZone公式ウェブサイトより]

映画のタイトル「รถไฟฟ้า มาหานะเธอ(ロットファイファー・マーハーナター)」には、タイ語ならではの言葉遊びが仕掛けられています。タイ人が聞くとすぐに思い浮かべるのが、バンコクの鉄道システムの旧称である 「รถไฟฟ้ามหานคร(ロットファイファー・マハーナコーン)」 という言葉です。本来「มหานคร(マハーナコーン)」は“大都市”という意味ですが、映画ではその部分を軽くもじって 「มาหานะเธอ(マーハーナター)」 とし、意味は 「君に会いに来たよ」 というロマンチックなフレーズになります。

英題は「Bangkok Traffic (Love) Story」で、頭文字を取ると “BTS” と略されるのですが、これは映画の主要舞台であり、ふたりを結びつける象徴として度々登場するバンコクの都市鉄道BTSと重なる言葉遊びにもなっています。

ดูหนัง รถไฟฟ้า..มาหานะเธอ
[写真 @TrueID公式ウェブサイトより]

主人公は、เหมยลี่(メイリー)。東京で言う“アラサーOL”に近い存在で、仕事も生活もごく普通。しかし、周囲の友人が次々と結婚し、気づけば自分だけがずっと一人…という孤独を抱えています。
そんなある日、彼女の人生に突然現れたのが、BTSで働くエンジニアのลุง(ルン)。ここから、昼と夜のように正反対の2人の不思議な恋が始まります。


[写真 @TrueID公式ウェブサイトより]

ある日、メイリーは BTSで働くエンジニアのルンと出会います。彼は深夜に線路の整備をし、昼間に休む“夜の世界の人”。一方のメイリーは太陽光パネル会社で働き、日中が生活の軸です。この“昼と夜”の対比は、映画が重視するシンボリックなテーマでもあります。2人が初めてデートするのは、意外にも プラネタリウム。外が昼でも中では星が見える場所――つまり昼と夜の中間点。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

物語が進むにつれ、最大の壁になるのが“距離”と“時間”の価値観の違いです。ルンは「会えなくても気持ちがあれば愛は続く」と考えるメイリーは「一緒に過ごす時間こそが愛」と信じる。

この対立は、映画の小さな描写にも現れています。たとえば、インスタントラーメンを作った直後に食べようとするメイリーに、ルンが「3分待って」と言うシーン。“待てる人”vs“待てない人”、その違いが2人の関係を象徴しています。

やがてルンがドイツ留学を決意し、2人は大きな岐路に立たされます。迷いながらも空港へ向かったメイリーは、しかし間に合わず、大切な瞬間を逃してしまう。その夜、空には McNaught(マックノート)彗星が尾を引きます。一生に一度しか見られない彗星――この描写は「今回の恋を逃したら二度と戻らない」という意味を重ね、映画に深い余韻を残しています。

果たして2人の恋はどんな結末を迎えるのでしょうか。その答えは、ぜひ映画本編で確かめてみてください。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

キャンストに関して、メイリー役:Cris Horwang(クリス・ホーワン)、すでに有名だったクリスですが、本作で大ブレイクしました。可愛らしくておしゃれ、でもちょっとドジで、感情がわかりやすい。多くの女性が「まるで自分を見ているみたい」と感じ、国中で共感を呼びました。クリス本人も天然で少しおっちょこちょいな性格があるため、メイリー像との“地続き感”が魅力を倍増させています。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

ルン役:Ken Teeradej(ケン・ティラデート)当時タイでも屈指の人気俳優で、爽やかで優しい雰囲気の“理想の年上男性”として圧倒的な支持を集めました。特にファンの間で語り継がれるのが、劇中のソンクラーンのシーン。ソンクラーンとは、タイの旧正月を祝う“水かけ祭り”で、人々が水をかけ合い、顔にパウダー(白い粉)を塗り合う伝統行事です。そこでケンが“ルン”として水や粉まみれになりながらも圧倒的にかっこよく登場し、「หล่อทะลุแป้ง(パウダー越しでもイケメン)」という名フレーズが誕生しました。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

本作が“社会現象級”と呼ばれるほどヒットした理由は大きく3つ考えられます。
1. 30代女性のリアルな“あるある”が満載、周りが結婚していく焦り、仕事の疲れと孤独、恋をしたくても時間がない、これらが丁寧に描かれ、女性観客の共感を強く呼びました。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

2. 舞台が「BTS」=バンコク市民の生活そのもの、BTSを中心に展開する物語は、バンコクで暮らしている人々にとって“日常そのもの”。観客は「ここ通ったことある!」と感じながら自然に物語に入り込めました。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

3. ロマンチックとコメディのバランスが絶妙、軽快な笑い、胸がキュッとなる恋の瞬間、そして大人が噛みしめられる人生のメッセージ。すべてが絶妙にミックスされており、どの年代でも楽しめる“完成度の高いラブコメ”として長く愛されています。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

バンコクという都市は、いつも慌ただしく、騒がしく、人が流れていく街です。でも、そんな流れの中にいるからこそ、メイリーの揺れ動く気持ちや、小さな希望、そして恋の瞬間が、より鮮やかに浮かび上がります。รถไฟฟ้า มาหานะเธอは、派手な演出や劇的な展開よりも、日常の温度に寄り添った物語だからこそ、人々の心に長く残り続けているのだと思います。BTS に揺られた経験がある人なら、誰もが「あ、こんな感情あった」と思い出すような、静かで暖かい恋の映画です。


[写真 @TheStandard公式ウェブサイトより]

ぜひ一度、のんびりとこの映画を観てみてください。
バンコクの街の魅力、そしてเหมยลี่という女性の愛らしさにきっと惹かれます。

[文・構成/タイナウ編集部]

guest

0 コメント
最初
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る
0
この記事のコメントを見る!x
タイトルとURLをコピーしました