新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたのは、タイの大人気ガールズグループPiXXiE(ピクシー)の「MUTELU」です。
2021年のリリースですが、2025年の日本でのタイフェスでも後半のクライマックスの盛り上げに投入された人気曲、Youtube再生は現時点で2160万回です。
まずタイトルの「MUTELU」(ムテル/ムーテル/ムーテールー)
「LU」で終わる英単語って見かけないので何だろう?と思ったら、タイの言葉で、「目に見えない力」だそうで、楽曲テーマからすでにおもしろい!
そして、タイの人の大半はこのMUTELUという概念を信じているとのことで、さらに気になります。
気持ちは行動にも表れる、ということで、企業がマーケティングに活用する「Mu-keting(ムーケティング)」なんていう言葉、手法も登場しているとか。
MUTELUの感覚をラッキーアイテム、ラッキーナンバーに取り入れたマーケティングで現在進行形。ユニークですね。
前置きが長くなりましたが、そんなMUTELUをコンセプトにしたこの曲もただものではありません。
そもそもこれをPOPソングのテーマに据えること自体がただごとではありません。
まず音です。
軽やかなリズムですんなり入ってきますが、これが普通じゃないです。
「ドン」→「タン」で4つ打ち、というのが定石ですが、この曲はがっつりラテン/レゲエ/レゲトン的なリズムをベースにしているので、「ドッタ、ドッタン」という、ちょっと溜めのあるパターンが中毒性を高めています。
そして音階。半音を行ったり来たりするメロディー設定がされていて、上記のMUTELUテーマの表現として、呪術的な感じというか、かなりオリエンタルな音階を意識してつくられています。
これが癖になるんですねえ…。
このオリエンタル感覚をメロディーに思いっきり全面に打ち出した例としては、結構前のK-POPですが、2NE1のI AM THE BESTを思い出しました。
これをMicrosoftのSurfaceのCMで聴いた時は「なんじゃこりゃ!?」と思ったものでした。
今聴いてもかっこいい。古いけど4億回再生。
そして、基調になる音と違った所に歌のメロディーラインを置いて浮遊感を出す、オリエンタルな感じの打ち出し方は、ヨガなど、東洋文化に傾倒していたころのマドンナをも思わせる壮大さを感じます。この頃ですね。
歌については、サビの歌詞は「MUTELU」のみ、以降はスキャット的なフレーズになっていて、PiXXiEのキュートさが抜群に発揮されていますね。
そして、サビはもちろん、要所要所できれいにハモっているのがとっても心地いいです。
MVのビジュアル的なMUTELU的な、パワースポット、ご利益アイテムのようなカラフルな演出と3人のかわいさが強調されていて、かつキレのあるダンスも堪能できる贅沢な構成になっています。
3人が入れ替わりでセンターに立ちますが、誰がセンターに来ても抜群のダンスパフォーマンスで絵になる所がすごいなあ、と思いました。
3人しかいないのに層が厚い!
これは定期的に聴きたくなる曲です!
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]