新旧問わず、音楽に親しんできたタイナウ編集部ワタナベが、未体験だったタイポップを聴いて綴る音楽鑑賞記。「サワディーワタナベ」は未知のタイポップへのサワディー=こんにちは のご挨拶です。
今回聴いたのは、タイの大人気ヘヴィーメタルバンドRetrospectの「Afterlife」です。
いいですね!!
サウンドはモダンなメタルという感じで、重厚ではありますがギターは輪郭が立っていて、ドラムもはっきり1音1音がわかるように調整されています。
ボーカルも、メタルによくある「ちょっと何言ってるかわかんないシャウト」一辺倒ではなく、シャウトとはっきり歌を聴かせるパートのメリハリが効いています。
むしろボーカルの元の声はシャープで、だからこそ重厚な音の間をくぐって届いてくる印象。とてもいいバランスだと思います。
そして全編通してすごーくメロディアスでエモーショナル。
このあたりも、モダンなメタル! という印象を強くしていて、2001年結成という老舗バンドながら、比較的若い層にも人気というのも頷けます。
このサウンド/ボーカルのバランスと、メロディアスな楽曲を考えると、日本のワンオクことONE OK ROCKのヘヴィーめな曲が好きな方はすんなり聴けるのではないでしょうか。
たとえばワンオクだとこんな曲あたり、全体的な雰囲気に近しいものを感じます。
さらに洋楽の方で遡ると、メタルサウンドにシャープなボーカルを組み合わせ、ヘヴィロックを一気にメロディアスなものに持っていった功労者とも言えるリンキンパーク的な側面も感じさせます。
リンキンパークが1996年結成で2000年頃に世界的大ブレイクを果たしているので、2001年結成のRetrospectにも大きな影響を及ぼしているかもしれません。
こちら、18年前、25億回再生。
今回の記事を書くにあたり、Retrospect以外のタイのメタル楽曲を数曲聴いてみましたが、モダンな音づくり、メロディアスな歌という特徴を備える曲は多かったです。
ということで、日本のアーティストとも、世界的アーティストとも地続きの音楽性を持っているタイのメタルは今後さらに飛躍するかもしれません。
とはいえ、「日本や欧米のロックは抵抗ないけど、どうもスっと聴ける気がしないなあ…」と思われる方も多いでしょう。わかります、その気持ち。
でも安心してください。
皆さん、知らぬ間に聴いているであろうブラジルのメタル楽曲があるのです。
ブラジルもメタルの宝庫として音楽業界では有名ですが、それどころではなく、メタル界代表格と言える世界的アーティストが出ているのです。
ピンと来たあなたはメタル人!
そう、ブラジリアン・メタルの雄、セパルトゥラです。
なぜ知らぬ間に聴いているのか…?
このセパルトゥラの曲、TVバラエティー番組「帰れま10」のアクセントに長らくずーーっと使われているのです。
00:23~数秒聴いてみてください。「あ!知ってる!」と思い当たる方も多いかと思います。
メタルとサンバとテクノを混ぜたような離れ業名曲、1993年のリリースです。
バラエティー番組にずっと使われるということは、日本人にとってもそれだけキャッチーということです。
Yahoo!知恵袋にも「かえれま10のあの曲は何ですか?」の質問されています。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11111391991
長くなりましたが、なじみがないエリアのアーティストでも、曲がかっこよければ聴ける!かっこよければ売れる!かっこよければバズる!ということですね。
Retrospectに戻ります。
繰り返し聴いていて思ったのは、メタルとタイ語の相性もいいなあと思いました。英語詞混合ですがほぼタイ語です。
歌を中心に聴いてみると、あらためて、ボーカルの声の幅が広いですねー。キレよく歌うパートとシャウトのパートは、メリハリを超えて「本当に同じ人の声なのか?」とすら思わされてしまいます。
いやー、1曲からこれだけいろんな側面が見えてくるのがおもしろい、とても濃くて充実感のある曲でした。タイのメタルもいろいろ聴いてみたくなりました。
さて、話は変わりますがメタルというと曲、音だけでなくファッションも含めたカルチャーという印象があります。
ちょっと目先を変えて、メタラーファッションの解説動画も見てみるのはいかがでしょう?
今もメタル業界の方々は(パンクもだけど)基本的には「ザ・メタル!」という感じの、いかつくてコワそうでワルそうなファッションをしていることが多いですが、これはもはや、堅い業界サラリーマンがまじめそうで賢そうで清潔感のあるファッションを心がけているのと同じ心がけ。と考えると、コワいとかワルいどころか、むしろ律儀。
こちらはKLDというブランド古着ショップのYoutubeチャンネルで、「ぐんぐんリユース君」なるキャラクターが、様々なブランドやファッションのジャンルやカルチャーを楽しくていねいに解説してくれるチャンネルです。
この回では、メタラーのファッションを取り上げていました。メタルの系譜も絡めつつメタルファッションの紹介をしていますのでご興味あればぜひ。
メタルという、タイの音楽の魅力的な一側面が拓けた鑑賞体験でした!
[文・構成/タイナウ編集部 サワディーワタナベ]