[写真 @4eveOfficial公式Xより]
タイのガールズグループ4EVEのPunchが、松原みきの名曲「Stay with me」のカバーを公開しました。このカバーは、Proo Thunwaがプロデュースを担当し、1979年のオリジナルが持つシティポップの世界観を現代的なサウンドで再構築した作品となっています。
「Stay with me」は1979年発表の日本発シティポップを象徴する名曲です。都会の夜の空気を感じさせるメロディライン、甘さと切なさのバランス、耳に残るフック、どの要素も時代を超えて色褪せず、近年の世界的な再評価を通じて新しい世代にも受け継がれてきました。楽曲の強みは、歌が進むほどに気持ちが滑らかに高まっていく旋律の設計にあります。サビの「Stay with me」というフレーズはシンプルでありながら象徴的で、情景と感情を一気に引き寄せます。コードが移ろうたびにムードが少しずつ変化し聴く側の心の温度を上げていく、この普遍性こそが世界各地で愛され続ける理由だと感じます。
Punchの歌声は、4EVEのグループ活動で見せるエネルギッシュな一面とは異なり、ここでは静かで繊細なトーンを見せています。柔らかく伸びやかな声が、原曲の持つ切ない美しさを損なうことなく、むしろ新たな温度で包み込んでいます。英語と日本語の響きを丁寧に乗せる歌唱には、彼女の音楽に対する真摯さとリスペクトがにじみ出ています。オリジナルの魅力を損なわずにモダンなリズム感を加え、滑らかなベースラインと透明感のあるシンセサウンドで、時を越えても色あせない“夜の都会”を再現しています。ビートは控えめながらも確かな存在感を持ち、Punchのボーカルを際立たせる絶妙なバランスに仕上げられています。
松原みきは端正で伸びやかな歌声、ジャジーで洗練された楽曲、そして作家陣・演奏陣の高い音楽性が合わさったデビュー期の作品は、日本のポップミュージックにおける都会派の美学を鮮やかに体現しました。「Stay with me」は、恋の温度や記憶の手触りを多くのリスナーの心へ静かに届いてきました。時代が変わって聴き手の環境に変化が起きようとも、その本質は変わらずむしろ世界のどこで聴いても伝わる普遍性が際立っています。
このカバーは、ただ原曲を再現するのではなく、Punchというアーティストが持つ新しい感性を重ね合わせた再解釈の一曲です。松原みきの名曲をベースにしながらも、Punchの声によって“今の時代のStay with me”が誕生したと言っていいでしょう。シティポップの持つノスタルジーが、タイのポップカルチャーを通して再び息づくそんな時代の流れを感じさせる作品です。Punchが奏でる新しい“Stay with me”は、過去と現在、そして日本とタイを結ぶ小さな奇跡のようなカバーです。
[文・構成/タイナウ編集部]
